投資目的で不動産を所有している方、これから所有したい方には、将来売却して収益を得たいと考えている方がいます。
しかし株やFXと同じように、価格が下がっている時に売ってしまうと、損をしてしまうでしょう。そうならないために、どういった要因で価格が下落するのかを知っておくことは大切です。
それを理解できれば、売るタイミングを見極められるでしょう。そこで今回は、不動産市場が下落する要因と、把握しておくべき下落への対策について紹介します。
Contents
不動産価値の下落と関係がある要因
世の中の動きや大きなニュースなどは、不動産の下落と関係がある要因です。まずはそうした要因のいくつかを、ここで紹介しましょう。
- 空き家の増加
- 団塊世代の高齢化による売却の増加
- 生産緑地の2022年問題
- 外国人投資家の動き
- 売り逃げする投資家の影響
空き家の増加
不動産価格は需要が多く、供給が少なくなれば価格が上昇するのは普通です。
日本全体で空き家が増加し、供給過多の状況が加速化すると、不動産の価格は下落すると予想できるでしょう。その点を裏付ける数字として「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)※があげられます。
つまり1世帯当たりの住宅数は1.16戸です。日本は世帯数よりも住宅数の方が多いという状況、つまり供給過多の状況にあるのです。今後この状況がどのように変化するのか、見守る必要があるでしょう。
※総務省 平成30年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要
団塊世代の高齢化による売却の増加
厚生労働省「我が国の人口について」にて発表しているように、2025年に団塊の世代は75歳以上となります。これにより団塊世代の人による財産整理や遺産相続のため、所有していた不動産を売却する事例が増えることも予想できます。
商品が多く出回ると、できるだけ安くしないと売れないという現象が起こります。これにより不動産の価格が下落するというわけです。
生産緑地の2022年問題
生産緑地の2022年問題も、不動産価格の下落の要因となるとよくいわれていました。
生産緑地とは、1992年の改正生産緑地法により指定された市街化区域内の農地として、保全することを主目的とした土地のことです。
1992年に指定された生産緑地の大半は、2022年にその期限を迎えます。その時税務上の優遇措置が受けられなくなるので、市区町村に買取を申し込むでしょう。
実際は市区町村が積極的に買い取ることはないと予想されていました。多くの生産緑地が宅地化されて、土地もしくはそのうえに家やマンションが建って、不動産市場に出回ると考えられたのです。
2022年問題の影響はそれほど大きくはない
政府の法改正が、生産緑地の2022年問題による土地の価格が下落を抑制する効果を生み出しています。たとえば2017年の生産緑地法の改正をみてみましょう。
市区町村が「特定生産緑地」を新たに指定すると、10年間の税制優遇措置の延長ができるようになりました。さらに2018年9月1日にスタートした「都市農地賃貸借法」もあります。
こうした法改正の動きにより、多く生産緑地が宅地化されて売りに出される、そこに家が建って売りに出されることはなくなりました。
2023年の現在、生産緑地の2022年問題の影響で、不動産価格が大幅に暴落するという事態は起こっていません。
外国人投資家の動き
東京でのオリンピック開催が発表された2013年以降、中国人を中心とした外国人投資家たちが、高級マンションを購入するケースも増えました。
こうなると外国人投資家は、不動産を売却し始めるので、その影響を受けて不動産価格は下がると予想できるでしょう。
こうした例からわかるように、外国人投資家の動きも、日本の不動産市場の値動きに大きな影響を及ぼします。
売り逃げする投資家の存在
さまざまな要因で不動産価格が下がるなら、その状況を察したプロの投資家は動きにでます。損失がこれ以上大きくなることを防ぐために、安くてもよいので売り切ることを優先するでしょう。
不動産価格の下落による収益の大幅な減少や、ローンの残債が払えなくなるというリスクを回避するためです。こうなると不動産市場へ、さらに安い商品が出回ることになります。
不動産価値の下落に関係があるとされるその他の要因
世の中の動きや大きなニュースといった外的な要因は、不動産価格を下落させるものとなります。
しかしそれ以外にも、建物の状態や立地といった不動産自体がもつ内的な要因も不動産価格に影響を及ぼします。不動産価格の下落に関係する内的要因をいくつか取り上げましょう。
- 建物の築年数
- 周辺環境
- 災害の影響
建物の築年数
土地と建物の両方が含まれている不動産の場合、売却するときには、その両方が加味されて価格が決定されます。土地は、年数が経過しても自動的に値が下がるというわけではありません。
さらにデザインが時代と合わなくなっている、安全性に問題が出てきているなどの理由で、価格が下がる場合もあるでしょう。
加えて建物には法的耐用年数が定められており、その耐用年数も不動産の価格に影響を与える要因になります。建物の構造ごとの法的耐用年数は、以下の通りです。
構造 | 耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽鉄骨構プレハブ造(骨格材肉厚3mm以下) | 19年 |
軽鉄骨プレハブ構造(骨格材肉厚3mmごえ4mm以下) | 27年 |
重鉄鋼構造(骨格材肉厚4mmごえ) | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
例をあげるなら、木造の家なら耐用年数は22年になります。そのため建築してから20年以上経過している木造の家を売りに出すなら、その価格はかなり安くなると考えられるでしょう。
周辺環境
不動産の価格は周辺環境の変化の影響も受けます。たとえば家やマンションの近所に別の大きな建物が建設され、日当たりが悪くなったこともあるかもしれません。
他にも近隣に工場ができ騒音も発生するようになったなど変化があると、当初の見込みよりも価格を下げる必要があるでしょう。
災害の影響
ハザードマップで災害の影響を受けるであろうと警告されている地域の不動産は、その影響から価格が下がることも予想されます。以下が災害への警戒が必要な区域の代表例です。
- 土砂災害特別警戒区域・土砂災害警戒区域
- 災害危険区域
- 津波最愛特別警戒区域・津波災害警戒区域
- 浸水想定区域
- 都市洪水想定区域・都市浸水想定区域
- 急斜面地崩壊危険区域
- 地すべり防止区域
例に挙げた区域で該当するエリアに不動産があれば、それは災害の危険性が高い土地や建物になります。価格が下がることも十分予想されます。
効果的な不動産価値の下落対策
不動産価格が下落する様子を見せたときに、どのような対策を取るべきか理解することは非常に大切です。
さらに投資向けの不動産を購入するときに、できれば価格下落の影響が少ない不動産を選ぶことも必要でしょう。
本項では、不動産価格が下落したときに取るべき対策法と、不動産を購入するときに取るべき対策法の2種類を紹介します。
被害が大きくなる前に損切りをする
価格が下がった不動産は、早めに売却して損切するのが対策法のひとつです。不動産価格が下落したときに、失敗するケースをみてみましょう。
もう一度価格が上がることを期待して、そのまま不動産を所有し続けるというものがあります。
こうした問題を避けるために、価格が下がった不動産は早めに売却して損切りできます。ダメージが大きくならないうちに赤字を確定し、売却して得た資金を次の投資に使えるでしょう。
売却する際は複数の業者を比較する
できるだけ損をせず売却するには、適正な売却価格設定が大切です。そのために複数の不動産会社に不動産の査定を依頼し、その見積もりを比較し売却価格の相場を確認しましょう。
不動産の価格が下がったので、この機会にすぐに売却したいという場合も考えられます。その際は、不動産一括査定サイトを利用することで複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。
将来的にも需要が見込める不動産に投資する
価格下落の影響を小さくするために、不動産を購入するときは、将来的にも需要が見込める不動産を選ぶことは大切です。
たとえば駅から近い・都心から近い、地価が高いといった場所にある不動産を購入します。
人気のあるエリアの不動産であるなら、将来的にも需要が見込めるので売却先も見つけやすく、高く売れる可能性があります。
将来的な需要を見極めるため自治体や開発会社、鉄道会社が公にしている情報を参考にできます。開発計画や鉄道路線の延伸計画から、将来的な需要を予想しましょう。
不動産投資におけるサポートを受ける
不動産投資として、マンション経営やアパート経営に着手する場合ポイントがあります。物件の価値を維持するために、賃貸管理会社からのサポートを受けることも大切です。
マンション経営やアパート経営でのリスクは、空室状態が続き家賃収入もゼロになることです。
賃貸管理会社によっては、空室でも一定の家賃収入を保障するサブリース契約を提供しているところがあります。サブリース契約を利用すると、空室状態が続くリスクを回避できるでしょう。
サブリース契約では家賃から手数料が引かれる、礼金や更新料がオーナーの収入にならないこともあります。
価値が下落しにくい不動産の特徴
不動産価格の下落に対抗する手段として、価値が下落しにくい不動産を購入するのが有効です。本項では価格が下落しにくい不動産の特徴について紹介しましょう。
使いやすい間取りになっている
使いやすい間取りであれば、幅広い範囲で需要を見込めます。価格を下げることなく売却できるでしょう。自分の好みや趣味に合わせてリフォームも可能です。
しかしそうした場合、売却時に買い手がなかなかつかない状況が発生する可能性もあります。
立地条件がよい
立地条件がよいエリアの不動産ならば、価格下落の影響を抑えられます。たとえば子育てしやすい環境が整っている、商業施設や病院・公共施設などが近くにあるなどです。
日本では、高齢者のみの世帯が増える可能性は濃厚です。高齢者にとって住みやすい環境が整っているエリアを探し、そこのマンションに投資することも考えられるでしょう。
交通の便がよい
交通の便が良いという点も不動産の価値に影響を及ぼします。駅から近い・都心から近い、急行電車が停車する駅の近くなどです。
特に、雨でも濡れることなく駅まで行ける駅直結型のマンションは、人気があり資産価値は高くそれほど下がることもありません。
賃貸に出したとき家賃収入が期待できるか、売却するときにそれほど価値が下がらないかを考えて不動産を探すのが効果的です。
不動産価格の上昇・下落に影響するデータ
不動産価値に影響を与える指数やデータを知っておくと、今後不動産価格が上がるのか下がるのかある程度予想できます。不動産価格に影響を及ぼすデータをいくつか紹介しましょう。
株価
不動産価格は株価に連動する傾向があります。株価が上昇すれば投資家の余力が増え、それにより不動産購入をする人が増え、結果として不動産価格が上昇します。
このように不動産は流動性が低いので、株価より遅れて不動価格は連動すると考えられています。
金利
不動産購入は一般的にローンを組んで資金を調達します。金利が下がれば不動産を購入する人が増えるのです。
不動産価格は上昇し逆に金利が上がれば、不動産を購入する人が減るので不動産価格は下落していきます。
消費者心理
消費者心理も不動産価格に影響を及ぼすデータです。実際に物価の高騰や住宅ローン金利の上昇が懸念されることを受け、不動産購入に対する消費者の心理も変化しています。
その点を裏付けるデータについては、全国宅地建物取引業協会連合会と、全国宅地建物取引業保証協会が調査した「住居の居住志向及び購買等に関する意識調査」※に注目です。
2021年度調査においては「買い時だと思う」が10.5%、「買い時だと思わない」が25.6%、「分からない」が63.9%でした。
結果からみると、買い時感が薄れているといえるでしょう。実際に買い時だと思わない理由として「不動産価値(価格)が下落しそうだったから」と、回答している方が28.8%と最も多くありました。
不動産の買い控えが深刻化すると購入需要が減るので、不動産価格は下がることになるでしょう。ただし金利上昇の傾向がみられるときは、金利が上がる前に購入しておこうという駆け込み需要が予想できます。
まとめ
この記事では不動産価格が下落する外的な要因と内的な要因について紹介しました。外的な要因で不動産の価値が下がることは、防ぐのが難しいものです。
人気のあるエリア・交通の便に優れているエリアにある不動産の購入が一つのポイントです。また、物件の維持管理賃貸管理会社に委託するといった方法で、不動産の価値を維持できます。
売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。信頼できる不動産会社に売買仲介を依頼する方法を取ると、高値での売却も期待できます。