不動産売却にかかる諸経費は?納税などの注目ポイントを紹介!

不動産売却を考えているけど、いつどこにいくら支払うのかがイメージできなくて困っていませんか。不動産売却の経費は、一括でドカンと発生するのではなく、売却に至るフローごとに発生します。

理由は、不動産売却に関わっている業者が1社だけではなく数社に渡っており、それぞれに経費を支払う必要があるからです。支払いのタイミングも違うのもそのためなんですね。

今回は不動産売却の経費について、いつどこにいくら支払うのか、初めての人でもわかりやすく解説していきます。

本記事を読めば、経費が発生するポイントを抑えることができるので予算組みがスムーズにできますよ!

不動産売却の諸経費は売却前と売却時に発生

不動産の売却は、買主が決まれば手続きはあっという間に終わります。しかし、売却するまでには数多くのプロセスを経なければなりません。

不動産を売却するにあたっては、「持っている不動産を売らなければならない」ここがスタート地点です。そしてスタートから、「不動産が無事に売れた」というゴールに至ります。

 不動産を売却する費用は、この売買契約に至るプロセスの局面の中で発生するものとご理解ください。

ではどんな局面があるのでしょうか?以下より、不動産の売却の費用として、何の局面で何の費用が発生するのか、詳しく解説していきます。

売却前は不動産を売りやすくするための費用が発生

売却前に発生する費用
  • ハウスクリーニング費用
  • 家財処分費用
  • 家屋解体費用

売却を決めたら、上記のポイントで住まいの内部に目を向けてみましょう。例えば内覧の見学などをする際、来る方はすでに築年数、立地条件、価格など客観情報をリサーチ済みの方がほとんど。

 すでに見込み客なので、綺麗で良い印象を持ってもらえれば購入アクションの可能性がグッと上がります。

努力次第で印象が変わる箇所に先行投資をすれば、希望通りの価格で成約できる可能性が高まりますよ。ぜひご検討ください。

ハウスクリーニング費用

不動産を売却にハウスクリーニングは義務ではありませんが、内覧などを行う場合は、綺麗な方が好印象。不動産購入の機会ロスを避けるためにも是非検討しましょう。

ハウスクリーニング費用は、床面積によって変わり、業者によってバラバラなので一概に費用は断定できません。場所ごとの相場としては下記をご参考ください。

場所値段場所値段
キッチン12,000円〜20,000円エアコン8,000円〜16,000円
レンジフード7,000円〜12,500円床のワックスがけ(6畳)8,400円〜15,000円
浴室12,000円〜18,000円水回り3点セット15,000円〜20,000円

上記を参考に、自分でできるパートと業者に依頼するパートに分けるのも経費をうまく節約できる秘訣になります。

業者に依頼する際は、複数社に声をかけて必ず相見積もりを取るようにしましょう。

家財などの処分費用

家財道具をどうするかも、不動産の売却前に検討すべき項目。新居先で使うのか?それとも廃棄処分か?リサイクル処分できるのか?物によって選択肢が分かれますが、おおよそ下記のようにまとめられます。

引越し業者に依頼業者廃棄処分売る
引越しサービス自治体の粗大ゴミ回収リサイクルショップの買取
引越し業者の引き取りサービス不用品回収会社を活用ネットオークションや
フリマアプリで出品

引越しサービスは後述しますが、引越し先で使うものと廃棄するものが混在している場合があります。

 そんな時は引越し業者の引き取りサービスを活用するとお得に処分できる可能性があります。

廃棄処分にする場合は自治体ごとに対応が異なりますので、お住まいの市区町村のホームページをご参照ください。また、有料ですが民間の回収業者を活用すると、手早く処分することができます。

処分まで比較的時間の余裕がある場合は、リサイクルショップやネットアプリを活用してみましょう。不要な家具が現金化できるチャンスです。

 ネットアプリは送料が高くなる傾向があるのでご注意ください。また、使用年数が10年以上の家財道具は売れにくい可能性があります。

いずれにせよ、処分するより現金化した方がお得です。リサイクルショップの無料査定で値段がつくか確認した方が良いでしょう。

時間が許す限り現金化する事をおすすめします!

家屋解体費用

家屋の価値がゼロで、土地だけの方が高く売れる場合は思い切って解体・撤去することも一案です。ちなみに家屋解体費用は一坪あたりで算出されます。

 目安としては、木造は3万〜5万/坪、鉄骨造は5万〜7万/坪、RC(鉄筋コンクリート)造は6〜8万円/坪。

例えば40坪の一軒家を解体する場合であると、120万〜200万程度の費用が発生することになります。更地にする前に、まずは不動産会社に相談してみましょう。

更地にした方が良いかどうかは査定額を元に慎重に決めて下さい。

売却時は不動産会社への仲介手数料が発生

不動産会社への仲介手数料は売却価格が400万円以上の場合、売買価格×3%+60,000円+消費税が費用としてかかります。例えば、売却価格が2,000万円の場合は下記になります。

20,000,000×3%=600,000円+60,000円=660,000円に税金66,000円で計726,000円。こうして計算してみると、仲介手数料は高額な出費ですね。

 しかしながら、不動産会社の中には仲介手数料を減額し、契約者に利益を還元する会社も多くあるので要チェック。

3割〜4割減額されれば、総額で数十万円以上のかなり大きい開きとなるので看過できません。キャンペーンなどを積極的に実施しているのでぜひ調べてみましょう!

まずは近くの不動産会社からリサーチしてみましょう。

住宅ローンを一括返済する場合は返済手数料も発生

売却代金を元手に住宅ローンを一括返済したい場合は返済一括繰上げ手数料が発生します。金額は金融機関によって異なりますが、相場感は1万円〜5万円程度です。

売主と買主との売買契約書の文書に貼る印紙税も発生

印紙税は平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成された契約書であれば軽減措置の対象となります。軽減措置とは、税額が減じられる特例の事です。

契約金額本則税率軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの400円200円
50万円を超え 100万円以下のもの1千円500円
100万円を超え 500万円以下のもの2千円1千円
500万円を超え 1千万円以下のもの1万円5千円
1千万円を超え 5千万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm)

売却時の法的手続きとして登記費用が発生

住宅ローン契約の際、金融機関はローンを組んだ不動産を担保に入れて融資します。債務者が返済不能の時に、その担保を差し押さえることができる権利を抵当権といいます。

 しかし抵当権をつけたままであれば売れる不動産も売れません。そこで不動産を売却の際、ローンを完済して抵当権を外す手続き「抵当権抹消登記」を行います。

この手続き自体は1物件1,000円と低額なのですが、書類作成や法務局への届出など、専門的な知識が必要となります。

そのため、司法書士などへ依頼するのが自然です。1物件1万5千円から2万円の経費を見ておけば無難でしょう。

手続きに時間が取れない時は専門家に依頼することも一案です。

売却時の利益にかかる譲渡所得税

不動産の売却によって得ることができた利益、これに対する税金が譲渡所得税ですが、条件としては「譲渡所得があり」、「譲渡所得がある場合に譲渡所得に税率をかける」ことで決まります。

そこで最初に不動産の譲渡所得(売却益)があるかを確認する作業が下記の式。果たして譲渡所得がでているかを検証します。

 譲渡所得 = 譲渡収入金額(売却金額)ー{譲渡費+(取得費ー減価償却費)}で求めることができます。

つまり、譲渡所得は控除する項目「譲渡費」と「取得費」を差し引いた額になり、不動産の売却益そのものではありません。

譲渡費はかかった費用全てが含まれる訳ではない

譲渡費は今まで説明した中で仲介手数料と印紙税と家屋解体費用が該当しています。全ての譲渡費は下記のリストを参照ください。

譲渡費にあたる費用
  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm)

上記の中から当てはまるものを足し上げていけば「譲渡費」が導き出せます。個別のケースに当てはめていき、譲渡費を割り出してみて下さい。

取得費は建物と土地の購入費用+α

取得費には譲渡費とは真逆に位置する費用です。簡単に言えば、「不動産を買った費用」ですが、概念として、実額法と概算法の2種類があります。中でも特に実額法の概念が売主にとっては軽視できません。

 取得費(実額法)は「建物と土地を購入時にかかった費用」と「取得に要した費用」になります。

ちなみに「建物と土地を購入時にかかった費用」は、「さかのぼって購入した不動産の金額そのもの」なのでご留意ください。次に「取得に要した費用」とは下記が当てはまります。

取得に要した費用
  • 購入時の仲介手数料
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税
  • 土地の測量税
  • 建物の解体費

上記の実額法で取得費を導き出すのが理想です。しかし購入時の価格がどうしてもわからない場合は、譲渡収入金額の5%が取得費(概算法)という計算方法が残されています。

利益が大きくなってしまう場合が多い概算法だと、納税額が大幅に増えてしまう可能性があるのでご注意ください。どうしても購入額がわからない場合は税理士の先生などに相談することをおすすめします。

減価償却費とは?

次は減価償却費の計算です。まず、減価償却費とは、建物は経年劣化していくにつれて価値も下落しますが、その価値を税法上数値化したもの

 ここで注意すべきポイントとしては、土地には減価償却費の概念はないことです。計算に入れないでください。

また、減価償却費には「耐用年数」という「ものの寿命」が設定されており、細かい数値が設定されています。まずは下記の表をご覧ください。

建物の構造耐用年数償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造70年0.015
れんが造、石造又はブロック造57年0.018
金属造骨格材の肉厚4mm超51年0.020
骨格材の肉厚3mm超4mm以下40年0.025
骨格材の肉厚3mm以下28年0.036
木造又は合成樹脂造33年0.031
木骨モルタル造30年0.034
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/05.htm)
償却率とは耐用年数に応じた割合のことで、耐用年数が長く設定されているほど、値は小さくなり、経過年数が耐用年数を超えれば、減価償却は消滅します。
 減価償却費の計算方法としては、減価償却費(定額法)=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数
例えば、木造2,000万の建物に15年住んだ場合の減価償却費は、2,000万円×0.9×0.034×15=918万円となります。

売却益が判明したら譲渡所得税を計算する

上記の過程で売却益が出ていることがわかったら、不明分は全て解決!いよいよ課税譲渡税が計算できます。下記のように計算しましょう。

 課税譲渡税額=譲渡所得×税率(所得税・住民税)で求めることができます。

税率は所有期間によって決まり、所有期間は5年を境に「長期譲渡所有」「短期譲渡所有」があります。詳しくは下記を参照ください。

所有期間
5年以下5年超10年超
短期譲渡所得長期譲渡取得
39%(所得税30% 住民税9%)20%(所得税15% 住民税5%)

課税所得6,000万円まで 14%(所得税10% 住民税4%)

課税所得6,000万円超 20% (所得税15% 住民税5%)

出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm)

マイホーム売却時などは特別控除の対象になる可能性あり!

マイホームを売却する場合は一定の条件を満たせば下記の式が適用されます。「譲渡所得税額=譲渡所得ー3,000万円×税率」3000万円に注目ください。

 つまり、譲渡所得が3,000万円以下になった場合は、税金が発生しない計算になります。

ただし、譲渡所得金額に特例の控除が認められるのは、下記の「一定の条件」を満たす必要があるのでご注意ください。

「一定の条件」リスト
  • 自宅を売るか、以前住んでいた家を住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 家を取り壊した場合、敷地の譲渡契約がその日から1年以内に締結され住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 家を取り壊してから譲渡契約の締結日まで、その敷地を貸駐車場用などで使用してないこと
  • 売った年の前年及び前々年に3,000万円の特例や自宅の交換の特例の適用を受けていないこと
  • 売った年の前年及び前々年に譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例適用を受けていないこと
  • 売った家や敷地の収用等の特別控除などの特例の適用を受けていないこと
  • 災害で滅失した家の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年末までに売却すること
  • 買い手と売り手が、親子や夫婦などの特別な関係でないこと

ポイントとしては、特例は数年に渡り連続して適用されないませんので、過去特例を使用したことのあるケースは要注意です。

また、敷地などを駐車場経営などの営利目的で使用していないこと、売主と買主が親族関係にないことなどが挙げられます。

マイホームを売却予定の方は要チェックです。

譲渡所得税の計算の具体例

では譲渡所得税の出し方について、今まで説明してきた式に基づいて、具体的な例で当てはめてみましょう。下記の例を用意しました。

マンションの譲渡所得税の計算の一例
  • 2000年にマンション(3,500万円・居住用・鉄骨鉄筋コンクリート造)を購入
  • 3,500万円の内訳は土地が1,500万円、建物が2,000万円
  • 2009年に3,800万円で売却
  • 譲渡費は300万円
  • 特別控除の特例は適用外

譲渡所得=譲渡収入金額(売却金額)ー{ 譲渡費 +(取得費ー減価償却費)}にそれぞれの項目を当てはめていきます。

まず「減価償却費」から始めると、2,000万円×0.9×0.015×9=243万円。つまり譲渡所得は、3,800万円 ー{300万円 +(3,500万円ー243万円)}=243万円となります。

次に税率です。上の表の所有期間を参照すると5年超の長期譲渡取得に該当しますので20%。つまり、求める譲渡取得税は、243万円×20% = 486,000円となります。

売却物件が現住所の場合は引越し費用が発生

売却物件を自宅にしているケースは当然、新居に引越しをすることが必要になりますが、相場は一般的な一軒家の場合は6~9万円、繁忙期の場合は10万円以上する可能性があります。

また、引越し先までの移動距離によっても割高になる可能性があります。

よくある質問

譲渡所得税に特別復興所得税はかかりますか?

今回は話を簡単にするためにあえて外しましたが、本来はかかります。ちなみに短期譲渡取得に0.63%、長期譲渡取得に0.315%加算されます。

軽減税率の特例としては6,000万円以下は0.21%、6,000万円超は0.315%加算されます。

途中で売却を断念したら仲介手数料は払う必要がありますか?

仲介手数料はあくまで売買契約の成功報酬として発生するので、基本払う必要はありません。ご安心ください。

売却のための広告費用などは負担しなくて良いのですか?

原則的に負担は不要です。ただ、売主様から特別な広告のリクエストがあった場合は実費が発生する場合があります。

不要な家財道具は売却先に置いていくことはできませんか?

引き渡しは空き家の状態が原則ですが家財道具がもし置いてある場合は処分費用を請求される場合があります。

まとめ

不動産の売却は様々な業者や士業の方が携わっていくために、タイミングと経費が一様ではなく、見積もりや選定を行いながら、じっくり進めていく必要があります。

しかし、それも不動産であるがゆえ。価値の高いものほど貴重です。時間をかけて慎重に慎重を重ねても損することはないでしょう。

一生涯のまたとない売り物を納得して売却するために、入念に経費をチェックして悔いのないプロセスを辿って下さい!

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